Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 350.912 caratteri · 702 schermate
「…………」
伊織は怖くなって来た。彼は幼時からいろいろな野の神秘を知っている。胡麻粒ほどな天道虫にでも、神の意志があると信じている。うごく枯葉も、呼ぶ水も、追う風も、伊織の眼には、無心なものである物は一つもなかった。そうして有情の天地に触れると、彼の幼い心も、行く秋の草や虫や水と共に蕭々とうら寂しい顫えを鳴り立ててくる。
彼はふいに、大きく声をしゃくって、泣きはじめた。
馬が見つからないので、泣きたくなったわけでもない、急に父母のない身が悲しくなったとも見えない。肱を曲げて顔に当て、その顔と肩をしゃくっては、歩き歩き泣いて行くのである。
こういう時、少年の涙は、彼自身にも甘かった。
人間以外の、星か、野の精が、もし彼に向って、
――何で泣くか。
と訊ねたら、彼は泣きやみもせずいうにちがいない。
――わからないや。分ることなら泣きなんかしないや。
それをもっと宥めすかして問いつめれば、彼は遂にこういうだろう。
――おいらは、曠い野に出るとふいに泣きたくなることがよくあるんだ。そしていつも法典ヶ原の一軒家がそこらにあるような気がしてならないんだよ。