Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 350.912 caratteri · 702 schermate
六
「…………」
夕方の薄ら陽が、河原の河水から又八の顔に揺らいで、顔じゅうが溢れる涙みたいに見えた。
うしろを忙しい往来が流れているのも彼は忘れていた。やがて、何も知らない朱実が、売れない手籠の物を腕にかけて、また、とぼとぼと、河原の先へ歩き出してゆくのを見ると、彼は、何もかも打ち忘れて、
「おういっ」
手を揚げて、走りかけた。
光悦と権之助とは、そこで初めて、駈け寄りながら、
「又八どの。何じゃ。どうなすったのだ?」
と、呼びかけた。
六
又八は、はっと振向いて、連れの者に、心配をかけていたことを、初めて気づいたかの如く、
「あっ。すみませんでした。……実はその」
実は――といったものの、その実をひとに伝えるには、急場の言葉では分って貰えそうもない。
殊に、今ふと、胸によび起した彼の発心は、彼自身でも、説明にむずかしかった。
勢い、いうことは、そこで唐突にならないわけにゆかない。又八は、喉につかえるこもごもな感情の中から、最も手っとり早いことだけいった。
「――すこしその、理がありまして、急に私は、還俗しようと思い立ちました。もっとも、まだ、和上から、ほんとの得度もうけていない身ですから、還俗するといっても、いわなくても、元々、ありのままなんですが」