Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 350.912 caratteri · 702 schermate
ばん――と何か音がしたのは、下郎の平掌が、途端に牛の横面をつよく撲りつけたのだった。
よほどな強打であったとみえ、牛は太い喉くびを横へ上げて、ぐるりと半廻りほど廻ったが、猛然と、角を向け直したと思うと、前にも増した勢いで、また、駆け出した。
――けれど今度は、十尺とも進まぬうちに、奔牛の足は、ぴたと止まってしまった。そして口から夥しい唾液と息を洩らして、巨きな体に、喘ぎの波を打たせておとなしくなっていた。
「お女中。はやく降りたがよい……」
下郎は、牛の後ろからいった。
この驚くべき働きに驚いた往来の者たちは、すぐわらわらと集まって来た。そして皆、下郎の足元に眼をみはった。――その片足が奔牛の手綱を踏んでいたからであった。
「……?」
何家の下僕だろうか。武家の仲間のようでもなし、町家の下男ともみえない。
周りに集った者は、そんなことをすぐ考えている顔つきだった。――そしてはまた、下郎の足と、踏んでいる手綱を見て、
「えらい力じゃな」
と単純に舌を巻いていた。
お通は、牛の背から降りて、下郎の前に、頭を下げていたが、まだわれに回り切れない容子だった。それに周りの人だかりにも気を縮めてしまい、その顔にも姿にも、容易に落着きがもどって来なかった。