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さんまいつづき
三枚続
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页
三十七
三十七
「べらぼうめ、何を、何をいってやあがる、」と、何か言っていやあがる。
「鉄さんぐうの音も出ずさ、こりゃお時さんが道理だ、はははは、」
歯の抜けた笑いに威勢の可い呵々が交って哄となると、件の仕舞屋の月影の格子戸の処に立っていた、浴衣の上へちょいと袷羽織を引掛けた艶なのも吻々と遣る。実はこれなる御隠居の持物で。
鉄と謂われたのはやっきとなり、
「やい、じゃあ汝あどうだ、この間鉄砲汁をやッつけた時一箸も食やしめえ。命取だ。恐しいといって身震をしやあがって、コン畜生、その癖俺にゃあ三杯と啜らせやがって、鍋底をまた装りつけたろう、どうだ、やい、もう不可ねえだろう。勿体ない打棄った処で犬だって困るだろうと謂ったじゃあねえか、犬だって困るよ、命取をよ、亭主が食ってるのを見て汝一人助かりゃ可いのかい、やい、七面鳥。」
「東西!」
「さあお家の乱れだ。」
「さてはこの前兆かッ。」
傍より、
「もし何でございます。」
「牝鶏のあしたすると言うて、牝鶏が差し出るからよ。」
「ええ、牝鶏があしたなら構いませんが、こうやって頭を集めているのは、柳屋の雄鶏が宵啼をするからでございますぜ。