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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
こう紋也には思われたのである。
自然紋也の心の中へ、駕籠の一団を吸い込んだ小門を持った貧しげの家が、どういう性質の家であるのか、そうしてその家へはいり込んだ、駕籠の一団の正体と、そうしてこれからの行動とを思い切って見きわめてやりたいという、好奇的情熱が燃え上がったことは、至極のことというべきであろう。
いまだに流れている額の汗を、紋也は手の甲で拭いながら、しばらくは立ったままで考え込んだ。「まだまだ俺の心や躯は麻痺陶酔をしているようだ」しかし紋也は歩き出した。そうして小門の前へまで行った。耳を澄ましたが物音もしない。屋内はひたすら森閑としている。「こうなると俺は俺の眼を疑わざるを得なくなった。はたして駕籠の一団は、この家の中へはいったのであろうか? はいったように思われる。が、それにしては静かすぎるではないか」なおも耳を傾けたが、依然として屋内は静かであった。「ひとつ裏口へでもまわってみようか」屋内が静かだということが、いっそうに好奇的情熱を、紋也の心へ燃え立たせたらしい。
紋也はその家の壁に添って、横手の露路を裏へまわった。裏は小広い空地ではあったが、地面には雑草がぼうぼうと生えて、ところどころに木立ちがあって、切り石などが置いてあった。