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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
「一刻で頑固で人と容れないで、思う通りをやってのける、俺の性質や暮らし方が、娘の出世に支障わったら、済まないことになるのだがなあ」
これに思いが至ったからであった。
「お菊は今年十九のはずだ。そろそろ婿を取ってやらなければならない。嫁に貰い手があるようなら、こだわらずに嫁にくれてやって俺の家は一代で潰してもよい。同業からヤクザの婿を貰って、なまじお狂言師に仕立てるよりも、嫁にやったほうが無難らしい」
嘉門の女房は数年の前に死んで、今は嘉門は鰥夫であった。子供はお菊一人しかない。で、嘉門はお菊に対しては、父としての世話をやくと一緒に、また母としてのいろいろの世話をも、やいてやらなければならなかった。しかるに嘉門の心の中では、限りなくお菊を可愛がってはいたが、自らの性質が禍いして、ずっとこれまではお菊に対して不注意の態度をとっていた。
それが済まなく思われたのである。
しかし嘉門は腕をといて、そうして元気よく笑い声を立ててまた蹣跚とさまよい出した。
「縹緻もよければ姿もよくて、しかも優しいあのお菊だ、自分の娘ながらりっぱなものだ、嫁に貰い手などザクザクあろう。