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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

立っている兵馬の風采といえば、痩せてはいるが身長は高くて、肩が怒って凛々しかった。はね上がった眉に切れ長の眼に、高くて細い長い鼻に、残忍らしい薄手の口などずいぶんと険しい人相であった。顳が低くて頬骨が高くて、頤がずっこけているところなども人を威嚇するに十分でもあった。しかし帯びている大小や、着ている衣裳はりっぱなもので、浪人などとは思われない。年は二十三、四らしい。

「これは手強い相手らしいぞ」紋也にはこんなように感じられたのでおのずと姿勢の構えがついた。「ひょっとかすると切り合いになるぞ」で――紋也は眼を配った。つまり足場を計ったのである。

と、そういう紋也のようすを、兵馬は刺すようにみつめていたが、ヒョイと右手を柄頭へかけると、

「ご所望しだいに素ッ破抜きましょうか」こういって口もとを曲げて見せた。左の唇が癇のためでもあろうか、斜めに上へまくれ上がって、そこから犬歯が尖って見える。

「さようさ」と紋也はすぐに応じた。が、刀へは手はかけずに、相手の瞳の動きを睨んだ。「ご所望しだいに切り合いましょうよ」

「が、おいやなら後日に譲る」いよいよ左の上唇を、上へまくって犬歯を見せて、兵馬は譏笑的にこういったが、柄から右手は放さなかった。