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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

「藤井右門か! 単純な奴め!」

「が、我が父の同志ではあった」

「そ奴と我が父とが議論をしたのだ」

「さよう、そうして負けられたそうだ」

「意見の相違だ! 考えの相違だ! 勝敗はなかったということだ!」

「王覇の別さえ心得られずに、野心ばかりを逞しゅうされた、貴殿の父上が鮮かにその際負けたということでござるよ。拙者父より承ってござる!」

「ふむ、その貴殿の父上であるが、その際仲裁をしようともせずに、黙っていたということでござる! いやいや藤井右門の説へ、片贔屓をしたということでござる。拙者父より承った」

「あまりに明らかな勝敗ゆえ仲裁しようにもする術がなく、父は黙っていたそうにござる。それを根にもって卑怯にも貴殿の父上におかれては、我が父大弐と藤井殿とを、反謀の企てあるように、官へ密告されたそうな! 裏切りでござろう! 卑怯千万!」

明和年間の尊王事件の、その立て者の山県大弐の、遺児の山県紋也は、尊王事件をあばき立てたところの、裏切り者の張本人の、桃ノ井久馬の遺児の、桃ノ井兵馬とこのようにして、今や露骨に向かい合った。

鍔ぜり合い!

明和尊王事件というのは「柳子新論」