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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
で、私はこの幹の瘤を、敵方の眼だと心得て、吹きつけてやったのでございますよ。まあまあほんとに可哀そうに、これでこの眼は潰れてしまいました。ハッハッハ、可哀そうな桐の眼!」
なるほど桐の木の一所の幹に、瘤のような枝折れの痕があったが、見ればその瘤をグルリと囲んで、無数に針が突っ立っていた。鈴江の手によってかかげられた、八手の群葉の間を分けて、日の光が一筋に投げ込まれていたが、その日の光に照らされて、突き刺さっている針が光って、キラキラキラと耀うようすは、ゾッとするほどにも凄く見えた。
と、鈴江は右の手を延ばすと、無造作に針をさらうようにしたが、抜き取った五十本の針を握ると、お菊の傍へ飛び返って来た。
「もう一度妾がいたしましょう。今度は桐の木の下枝の蕾へ吹きつけることにいたしましょう」
いいいい鈴江は掌を開いた。
「これが雌針、これが雄針、これが雌針、これが雄針、長さは同じでございますが、太さが違うのでございます。同じ太さでありましたら、息が籠って吹かれません」
いいいい鈴江は左の手の指で、針の穂先を揃えるようにした。その針が薄紅い掌の肉の、円い窪みに充たされていて、水銀が溜っているように見えたが、反射する光沢が交叉し合って、それが掌から二寸ばかりの上で、虹のような色彩を織っている。