轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
不安の一時
顫わせて、咽び泣いている向こう側に、美男で若くて凛々しい風貌の、山県紋也が冷然として、時々盃をなめながら、無言でお粂を見守っているようすは、水戸様石置き場の空屋敷という、特殊の私娼窟であるがために何となく凄味に眺められた。土間の中は陰森として薄暗い。蝋燭の火が揺らめいて、土間の上の男女の二つの影を物の怪のように顫わしている。気象の勝った男勝りのお粂が何ゆえにそのように弱々しそうに咽び泣きなどをはじめたのであろう? 磊落で豪放で親切な紋也が、何ゆえに冷然としているのであろう?
とまれお粂は咽び泣いているし紋也は冷然として無言でいる。でこの土間の中は物寂しくて、鬼気にこめられているようにさえ見えたが、もし紋也にしろお粂にしろ、戸外のほうへ注意をむけて戸外のようすをうかがったならば、歩いている人々の足の音が、にわかにせわしく乱れて聞こえ、口々に何事かをいい合いながら、すれ違ったりぶつかったりして、露路のほうへ走って行く者もあれば、水戸様石置き場の空屋敷という、この一画から遠のく者もあって、混雑を呈していることにきっと感づいたに相違ない。
「喧嘩!」「人殺しか!」