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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
狂女と酔漢
負われている子のぼんのくぼが、妙に痛々しく蒼白く見え、裾からはみ出されている女のふくら脛が蛇の腹のようにヌラヌラして見えた。
「お父様を探しに行きましょうねえ。そうしてお渡しいたしましょうねえ。あのお方があのようにもほしがるのだから……。坊や、お笑い、竹太郎や」
しかしまもなく女の姿は、ふたたび闇に呑まれてしまって、横丁から佐久間町の通りへ出られる、出口の辺で唄う声が聞こえた。あの山越えて行く時は……と、その声の絶えた時に、誰かに向かって話しかけるような、同じ女の話し声が佐久間町の通りから聞こえて来た。
「お爺様、ご存知ではござりませぬか? 妾の大事な竹之助様の行方を?」
狂女と酔漢
すると老人の声が聞こえた。
「竹之助様? 存じませぬなあ」
「可愛いお方なのでございますよ」また女の声がいった。
「可愛いお方でございますかな」答えて老人の声がいった。
「それはそれは結構なことで」
「妾の良人なのでございます」
「ああさようで。お前様の良人で。で、可愛いお方なので」
「妾を大変可愛がってくれます」
「ご夫婦仲がよろしいそうな」
「ピシャピシャ叩くのでございますよ」
「叩く? ほう! 何を叩くので?」