轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

露路の入り口から二、三間ばかりの地点は、横ざしにさし込んでいる月の光のために、かなりハッキリと見えていたが、それから先は暗かったので、見きわめることができなかった。まもなく犬の吠え声もやんだ。

「爺め、この露路へ逃げ込みはしなかったかな?」ふと金兵衛には思われたので、露路口に立ってすかして見たのであったが、やはり真っすぐに佐久間町の往来を、先へ追って行くことにした。こうして佐久間町の通りをはせ過ぎ、代官町の入り口まで来た、しかしその間に老人らしい男の姿らしいものさえ見なかった。「ではやっぱりさっきの爺は、この大通りは通らずに、どこかの露路へでも逃げ込んだのかな?」こう思って金兵衛は力を落としたが、それと一緒に堪え堪えていた、体の衰弱が一時に出て、立っていることさえできなくなった。

「残念だがもうしかたがない。これ以上は俺には追って行かれない」――で、金兵衛はグタグタになって、往来の上へ両膝をついて、首をうなだれて太い息をついた。が、その時人の気勢が行く手にあたって感ぜられたので、首を上げて行く手をすかして見た。すると一人の大兵の男が、こちらをさして歩いて来るのが、月の光に鮮やかに見えた。