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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

若侍の心

若侍の心

隣りの部屋の女の声を聞いて、笑ったのは女たちばかりではなくて、ほかに四人の男があった。女の声の聞こえて来た、その部屋を中にはさむようにして、老女たちのいる部屋からいえば、反対側にあたる所に、同じような部屋ができていたが、そこに置かれてある一基の燭台の橙黄色の燈火に照らされ、端坐をしたり、肘枕をしたり、横になったり、胡坐をかいたりして、武士にあるまじい自堕落な態度で、緑色の衣裳を一様に着た、四人の美貌の若い武士がいたが、この武士たちが笑ったのであった。一人の武士がいった。

「ちと今夜ののは手剛いと見える」肘枕をしている武士なのであったが、こういうと荒淫の女の唇を、連想させるに足るような赤い薄手の受け口めいた唇を、いよいよ上へそらすようにした。枕にしている左の腕が、肘のあたりから露出していて滑らかそうな柔かそうな蒼白い皮膚が燈火に映えて見えた。睫毛がとりわけ濃いためか、眼が隈取られているように見える。「が、どのように我を張っても、しまいにはきっと退治られる奴さ! 我を張るだけが馬鹿というものさ。それに苦痛の事ではなし」

「そうだ」とすぐに答えるものがあった。