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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

永遠の男性

と、その武士はよろめくように歩いて、襖の前まで寄って行ったが、あたかも襖へ食いつくようにして、その襖の合わさり目から、隣りの部屋をのぞいて見た。

永遠の男性

すると端麗な鼻を持った武士が、不安そうに声をかけた。

「貴殿ばかりは見てはいけない。よくないことが起こるだろう」すると受け口の武士もいった。

「そうだ、なるたけ見ないほうがいい。貴殿は一番苦しんでいる。だからなるたけ見ないほうがいい。……窒息して死ななければ、自分で自分を殺すようになろう」するともう一人の武士がいった。

「我々四人は仲間なのだ。一人欠けても寂しくなろう。なるたけ大事を取ってもらいたい! 貴殿見るのは止めたほうがいい」

しかし富士型の額を持った武士は、隙見をすることをやめなかった。

「今、あのお方は頤を両手でささえておられる。蝮の眼が若衆武士を狙っている」隙見をしながらそういった。

四人の武士が集まって、燭台の燈火を取り巻いていたのが、富士型の額を持った武士が、一人だけ円陣から抜け出して、襖の面へくっついたので、円陣の一所へ空所ができてそこからさし出ている燈火の光が、襖のほうへ届いて行って、そこにくっついている例の武士の腰から踵までを光らせている。