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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

七人の武士たちから眼を放すと、見台を前に控えながら、床の間に近く端坐している老儒者のほうへ視線を送った。これは当然のことであろう。紋也が見てもって重要人物としている七人の有名な武士たちをはじめ、二十人余の武士たちを、眼の前に置いて悠々然と、しかも威厳と権威とをもって教えるがよう講義をしている、そういう老儒者は紋也にとっては、驚異でなければならないのであるから。

「どういうご身分のお方なのであろう?」で、老儒者をつくづくと見た。

と、その威厳のある老儒者であるが、右の手を胸へ軽く上げたかと思うと、ホトホトと見台の縁を打った。諸人の注意を呼んだのである。

「力ある大国の大名を、打って一丸となし、その連合の大勢力をもって、尊王抑覇の大業を企つべきをあえてなさず、ただに民間市井の衆に、説を説いて事を図ろうとなされた山県大弐殿と藤井右門殿との、行ない方は率直に申せば、遺憾ながら少しく軽率でござった」――今は紋也から眼を放して、ひたすら老儒者をみつめている、部屋中の武士たちに向かいながら老儒者の説き出した言葉といえば実にこのような言葉であった。

忠義の本道

「忠義の道は一筋でござる!」