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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

やはりあなた様には

と、優しい声でいった。

「よく集めたのう、見事なものじゃ! ……大業をとげるには進んだ武器を、こう集めるのが本当でござる」――いいいい視線を返したが、紋也に向かって声をかけた。

やはりあなた様には

「山県紋也殿おすわりなさるがよろしい。だいぶ衰弱をいたしているようでござる。しかし衰弱を致しておられても、そのようにここまで来られるようでござれば、まずまず大丈夫でござりましょう。お粂殿に詳しく承わってござる、水戸様石置き場空屋敷とやらで、随分ひどい目に逢われましたそうで。がそれとても貴殿のお父上や、藤井右門殿の遭遇なされた、悪い運命に比べられては、それこそ数にもはいりますまい。……とはいえ大変お気の毒でござった。しかしこの際申し上げる、今後はあのような下々の場所などへは、あまり繁々と参られぬがよろしい」ここまでいって来て、老儒者は不意に言葉を切った。

それまで刀を杖について、それにすがってたたずんでいた、紋也がヒョロヒョロと座敷の中へよろめきながらはいって来たからであった。その姿のすさまじいことは! 顔色といえば蒼白であり、眼といえば玉のようにむき出され、口といえば椀のように開かれて、上の前歯が唇から洩れ喰いつきそうにもけわしく見える。