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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
東海道を敵と敵
しかし今日も時あって、ぼたんの花の咲く候になると、かさほどの大いさのぼたんの花が、天龍川の上流から、流れてくるということである。
東海道を敵と敵
いやいや物語は以上だけで、完結することはできなかった。
素晴らしい重大な出来事が、まもなく起こったのであるから。
それは初夏のことであったが、一人の武士と一人の娘とが、旅よそおいをりりしくして、京丸のある地点から京都に向かって発足した。
山県紋也と鈴江とであった。
「園子様おたっしゃでおいでなさればよいが」
「さようさ、たっしゃでおいでなさればよいが」
「兄上を慕って江戸表などへ、おいでなさらなければよろしゅうございますが」
「わしもその事が心配なのだよ。江戸表へ出たいというような事を書面にしたためてよこされたのは、去年の初秋のことであってその後仕事に取りまぎれて、わしは消息さえしなかった。……江戸表へなどおいででなければよいが」
「園子様のお兄様の青地清左衛門様を、箱根の山中で討ち取りましたは、何者なのでございましょう?」
「これだけはいまだにわからない。いずれは北条美作などの、一味の者と思われるが」
「さぞ園子様におかれましては、敵が討ちとうございましょうな」