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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

片耳の大男と変面の小男

自然そちとも有縁といえよう。……麿の別邸は烏丸にある。いつなりと訪ねて参るがよい。そちの力にもなるであろう。麿にも頼みたいことがある」

「お訪ねいたしますでござります」

娘はうやうやしく一礼したが、そのまま顔を上げなかった。感泣をしているのかも知れない。

「くわしいそちの身分なども、まいった時に訊ねるとしよう」

こういいすてると徳大寺大納言は、供侍を見返ったが、「青地、青地、清左衛門!」

「は」と身近く寄り添ったのは、公卿侍の青地清左衛門であって、二十八、九歳の優男であった。「何ご用にてござりまするか?」

「今夜のことは秘密にいたせ」

「かしこまりましてござります」

青地清左衛門を従えて、霞の中へ悠々と、徳大寺大納言家の歩み去った後は、お粂という娘一人だけとなった。

「徳大寺様を手の中へ入れた。金ちゃんに話したら嬉しがるだろう。その金ちゃんが何をしているやら。いまだに姿を見せやしない」

いやこのころ金ちゃんは、千本お屋敷とご用地との露路で、片耳のない大男と、妙な立ち話をやっていた。

片耳の大男と変面の小男

「で、お前さんの名はなんというんで?」こう訊いたのは金ちゃんである。