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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
醜男で小兵で敏捷らしい。
「へい、私の名は鴫丸というんで」こう答えたのは片耳のない、大兵だが魯鈍らしい男であった。年格好は二人ながら、二十七、八歳と思われる。
「へー、鴫丸? いい名だなあ、が、柄とは釣り合わないよ」
「皆様もそうおっしゃいます。――が、これは芸名なので」
「フーッ、芸名? これは呆れた。ではお前さんは芸人なので?」
「芸人衆様でございますよ」
「ふざけちゃアいけない、何が『様』だ。がまあまあそれはどうでもいい。何を商っているんだい?」
「え? 商い? これはどうも、私は芸人衆様でございますよ」
「だからよ、訊いているじゃアないか。どんな芸を商っているのかってね」
「あッ、なるほど、そういう意味なので。……へいへい軽業を商っております」
「ハーン、そうか、軽業か」
「それから手品も商っております」
「おや、二色もやるのかい」
「それからお芝居もいたします」
「凄い芸人があったものだ」
「ええと、それから女相撲なども」
「フーッ、とほうもない芸人衆様だ」
「ええとそれから猿芝居なども」
「おい、いい加減で許してくれ」
「長崎渡りの奇術なども、幕間幕間に演じます」
「で、お前さんは何役なので?」