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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
……それが妾なのでございますよ」
「ああそれではあの私娼か!」山県紋也は思い出した。いかさまそういう女があった。が、紋也には合点がいかなかった。年齢とそうして風貌との相違が、著るしいがためであった。
「いかさま」と紋也は声をかけた。「そういう女とはあの空屋敷で、行くたびごとに逢いましたよ。しかし、その女は三十五、六で、風采もいやらしく容貌も醜く、態度も荒んで淫蕩で、あなたとは似ても似つかないような、そういう女でありましたよ。たしか私娼でありましたはずで」
すぐに女の声がした。
「顔や姿を変えることなどは、妾にはなんでもありません。年や態度を変えることなども、妾には何でもありません」
「では」と紋也はとがめるようにいった。「数あるあなたの商売の中には私娼という商売もありますので」
「はいはい私娼もいたしますとも」
「穢い女だ! いやな女だ!」
「でもお信じくださいまし、妾は処女でございますよ」
「何を莫迦な! 私娼だというのに!」
「でもお信じくださいまし。一歩手前で踏み止まります」
「一歩手前で?」と鸚鵡返した。
「許さないのでございますよ」
「ああなるほど。……ああなるほど」