轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
五
その印象はいづれも、夫らしくない印象で、寒々としたものを彼女の胸に伝えるばかりであつた。
「おねえさん、どう、ピヤノとのお別れに、今晩は、もうこれでいゝつていうまで、おひきになつてごらんなさいよ。あたしたち聞かせていたゞくわ」
いよ/\あすは来るという前の晩、夕食をしながら、義妹の百々子が言つた。
風の荒い晩であつた。
五
夕食のあと片づけがすむと、しゆうとの乃婦は、
「あたしにやどうしても西洋の音楽つていうもんはわからないけれど、これからはやつぱりそれじやいけないんだろうね。さあ、そうかといつてお琴や三味線が聞けないとなつたら、あたしやどうにもさびしいね」
と、こんな前おきをしておいて、康子がピヤノの方へ起つて行きかねているのを、
「さあ、さあ、ひきおさめならあたしに遠慮はいらないよ。この風ならご近所へもそう聞えやしないだろう」
この程度で異議はないものとみとめなければならぬ。康子は義妹の方へ眼で笑いかけながら座をたつた。
楽譜の一つ/\をめくつてみながら、それ/″\に織りこまれた感情のあやが、過ぎ去つた自分の心の歴史と結びついて胸のうずくような旋律ばかりであることに気がつく。