轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
九
農業会……役場……でしたかしら、お勤めは?」
「はあ、農業会に籍はおいてるんですが、なんにもしてないようなもんです。そう、そう、けさ、北原先生からハガキをもらつたんですが、そちらへもなにか便りがありましたか?」
「北原先生? いゝえ?」
と、康子は、まぶたをいつぱいに引きあけ、
「それで、北原先生、いま、どちらに?」
康子が東京から帰つて来た時は、もう、北原ミユキは学校をやめて、実家へもどつたといううわさを耳にしただけであつた。
「ハガキにはたゞ、瀬戸内海のある港町にて、と、ばかりで、見当がつかんのですが……」
「瀬戸内海のある港町……」
と、康子はおうむ返しに口の中で云つてみる。
「どうも変だと思つてたんです。急に学校をやめて遠くへ行くようなことを言つてましたが……。なんでも、復員船のはいる港を、片つぱしから歩いてるらしいんです」
「まあ、いじらしい……。でも、北原先生らしいわ」
「まつたく、情熱家だから……」
市ノ瀬牧人は、べつに皮肉らしくもなくそう言い、その言葉に自分でてれている風であつた。
九
康子が宿へ帰ると、北原ミユキからの部厚い手紙がついていた。恐らく市ノ瀬へあてたハガキと同時に書いたものであろう。