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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页

青空文庫

五

と、筒井レイ子は笑いながら言つた。酔つているときとうつて変つた、しんみりした調子でものを言う女であつた。

「ところが、案外よく眠れたわ。でも、あゝいうこと、もうしつこなしよ」

「うちの好き勝手にしたんやないもの。それわかつてもらわんと困るわ。あんた、男いうものどない思てんの? こちらしだいで言うまゝになるもんよ」

「あんたなら、そうかもしれないわ」

と、北原ミユキは、投げ出すように言つた。

すると、筒井レイ子は、もうその話はどうでもいゝというふうで、

「オーさん入院したいうのに見舞にいかんの」

五

北原ミユキは、尾関が病気をしているのだということをおもいだした。しかし、病院がどこなのかもわからず、見舞にいくなどということは夢にも考えていなかつた。だから、相手の言葉にはろくに返事もしないでいたところ、その晩、例の正木がまたぶらりとやつて来て、

「尾関からのことずけをすつかり忘れてたよ。なんでも急に話したいことがあるんだそうだ。直接でなけりやだめなんだとさ」

と、あたりはゞからず言うのを、彼女は、

「そう、どうもありがとう。でも、入院してらつしやるんでしよう? ご病気はどんなふうなの」