轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
四
ところが、今日はじめて、彼女の知性が彼の頭脳にいどみかけたのである。それはまつたく不意打ちと言つてよかつた。だからこそ、彼は、受身の立場で応戦しなければならなかつた。かすり傷までは負わぬにしても、余計な神経の疲れがおりのように残つたのである。
四
市ノ瀬牧人は、父が製糸に手を出して失敗し、ひろい土地屋敷をあらかたなくしてしまつたので、今は母と二人で主食以外のものは自給できる小じんまりとした生活をしているのであるが、母は父の死後、一人息子の彼に頼りきりで、早く身を固めさせる算段ばかりしていた。年ごろの娘ならいくらでもあるという時勢に気をよくし、彼女は、あれはどうか、これはどうかと息子の気を引いてみるのだが、彼は、いつこうこの話には乗ろうとしない。
「まつたくお前というひとの気が知れんに。しまいに残りもので我慢せにやならんようになるに」
「いゝよ、おつ母さん、そんな心配せんでも……。女の子はあとからあとから生れて来るもんだで」
そんなふうに彼はごまかして母親の口をつぐませはするが、なにしろ毎日顔をつき合せている間柄なので、あの手この手で攻めたてられるのには、彼も少々業をにやしはじめた。