轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
十
十
井出一徳が自決するつもりでいると、夫人の康子から直接打ち明けられた中園三郎が、その時、どんなふうに出たかは、こゝでこま/″\と言う必要はない。
それは、康子がうす/\期待していたとおり、そんな行動は絶対に思い止まらせなければならぬと言い――もし彼女の力でだめなら、自分が自分流に情理をつくして説いてみる、と、進んでこの難役を買つて出た。
「では、もう上りが来る時間ですから、これで失礼します。鎌倉へ寄るまでに、私、この足で大佐殿にお目にかゝつて参ります」
そう言いすてゝ、駅の改札口へ姿を消すまで、康子はほつとした思いで中園を見送つていた。
夫の後輩とは言いながら、自分よりも七八つ年上のこの中園が、頼もしい弟のようにみえるのはなぜであろう?
そう言えば、中園に限らず、決して広い交際ではないが夫の周囲のだれかれ、官等や職務の上下を問わず、彼女などに対して示す一種の親身な、それでいてちやんと礼にかなつている態度を、康子はほかの社会にみられぬ軍人特有のものときめていた。夫の一徳でさえ、妻の自分にはいつこうに不愛想で、時には暴君そのまゝの行状を示すのに、よその細君に対しては、寸分もすきのない紳士振りである。