轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
道はいずこ
一
その列車なら、今度の和歌山行に乗ればことによると電車で間に合うかも知れぬとの返事だ。彼女はやつと光明を得た思いで、一時預けのリュック・サックを受けとると、出札口の行列に加わつた。
薄暗がりでぼんやりしかその顔を見ていない男の、どんな特徴を覚えていて、再び大勢の人なかで、それを探しだすことができると言うのか。まことに雲をつかむような話だが、彼女には、それがやさしいとかむつかしいとかいう問題ではなかつた。なにかひと筋の糸のようなものが、彼女をそつちへ引張つて行つてくれるものと信じているふうであつた。
やがて、切符が売り出された。
道はいずこ
一
井出一徳元大佐は昭和二十年十一月二十八日の夜、H工しよう裏のうず高く積まれた兵器資材の山のなかで、黒焦げの死体となつていた。ガソリンをしませた毛布にくるまつたまゝ、致死量の劇薬を服用し、意識を失う直前にライターの火をつけたのである。
翌朝になつてしよう員の一人がそれを発見した。
この事件があつてから一と月のちのことである。
遺骨をおいた床の間の前で、妻の康子は、夫一徳の実弟、三則とむかい合つて静かに話をしていた。