轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
二
息子のモトムとあんなに別れを惜しんだ少女は、中園の娘、ヒデ子ではなかつたか。
とはいうものゝ、彼女は、こゝまで来て、あらわにそれと言いたくない自分のひそかな期待、本心とみられることはまだ/\承服できないような中園に対する一種の興味を、もう否定はしなかつた。
地獄の旅のような二日二晩の汽車の中で、彼女は、うつら/\考えた――市ノ瀬牧人の前からはどうしても姿をかくさなければならない。永久に……そうだ、永久にだ。自分というものをいまだれかの手にゆだねるとしたら……。彼女の胸はあやしく波立つた。
二
待合室のストーブのまわりは、折り重なるように群集がひしめき合つていた。
こゝでは、船の欠航がどういう原因なのかを人々は論じ合つている。濃霧のためだと言うものもあり、暴風の警戒が出たからだと主張するものもあつた。しかし、一人の厳めしい洋服姿の男が、薄笑いの中で言葉を濁しながら、近頃、機雷がおびたゞしく流れてくるからだと、断言したので、一同は、是も非もなく口をつぐんだ。
井出康子は、待合室の一ぐうにやつと腰をおろす場所をみつけ、リュックと手提げカバンを下において、くた/\になつたからだを休めることにした。