轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
ところが、父は、かねて万一の場合のことを弁護士に託してあつたので、その弁護士からの呼び出しで、康子は、ともかく東京へ出て来た。そして、そのまゝ、いなかを引きあげることにしたのである。そういうわけで、現在、自分の実家には違いないが、いわば父の情婦であつた女と同じ屋根の下に住み、そのうえ、町内のり災者だという二家族にいくつかの部屋を占領され、それはそれでいゝとして、彼女は、息子のモトムと二人、二階の寝室二部屋とこの応接間とをわずかに自由に使える身分であつた。
が、そういうこまかい説明は、市ノ瀬牧人にする必要もなく、彼女はすぐに、言葉をついだ――
「でも、よく来て下すつたわね。どうかしらと、実は思つてたの」
「なんだか知らないけど、こいとおつしやるから出て来ました。どんなご用ですか?」
「それはまあ、ゆつくりお話しするわ。いまお着きになつたの?」
「けさ早く着いたんですけれど、宿をきめとく方がいゝと思つて、友達のところへ寄つて来ました。二三日は泊めてくれるでしよう」
「あら、どんなところでもよければ、うちへ泊つていたゞくんでしたのに……。これでもいなかの暮しよりはすこしはゆつくりしてますのよ」