轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
そいつは、ことだ」
と、ちよつと大げさに言つてみせて、
「いや、あすの朝、ひよつとしたらトラックの便がありやせんかな。聞いてみてあげましようか?」
「あちらに電話はございませんのでしようね」
康子は、念のためにたずねた。
「電話どころか、電燈もまだつかんそうですよ。第一、人の住めるようなところじやないや」
それには、康子は驚かなかつた。人が住めようと住めまいと、現に、住んでいるのである。
トラックは当分出ないという返事であつた。
今から歩いて行つて、どれくらいかゝるかしらと、彼女は思つた。たしかワッカナイから三十キロと聞いている。一時間に三キロとして十時間……。道を迷わないとして、たつぷり一日は歩きとおしだ。あすの朝にするよりしかたがない。そう決心をして、細川ヨシ子の方を振りかえると、もうそこには姿はみえない。
店の外へ出てみたが、それはむだであつた。通り一面にたちこめている霧が、すべてをおしつゝんで、人の顔などは見分けがつかぬ。
細川ヨシ子は、いつの間にか、黙つて、この霧のなかへ消えてしまつたのである。
七
トラックの便は当分ないということがわかり、彼女は、それなら道順を詳しく調べて、いつそ歩いて行くよりほかはないと覚悟をきめた。