轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
汽笛の音がどこかで底鳴りのように聞えるのだけれども、海の方向さえ、もう見当がつかぬ。もし風がとき/″\吹かなければ、足もとの道も見えないくらいであつた。
康子はいつまでも、こうしてはいられぬと思い、一歩、一歩、用意深く前へ進んだ。ときたま風向きによつて、眼の前にぱッと視界がひらける瞬間がある。彼女はすかさず足をはやめ、ほつとひと息つくのである。が、こういうことを繰りかえしているうちに、疲れは刻々に重なつて、からだが言うことをきかなくなる。
親子はついに、折り重つて、砂地の斜面の上に倒れてしまう……。
どれくらい時間がたつたか、康子は、ふと眼をさます。モトムは彼女の腕のなかですや/\眠つている。手足は冷えきつて無感覚になつているのだけれども、背中には日光の直射が感じられる。霧はもうなかばはれていた。
顔をしずかにあげると、海がすぐ眼の前に見える。波打ちぎわの白い線が遠く続いているかなたの空に、あざやかなにじがうかんでいる。
そのにじのほのおの下に、まださめきらぬ彼女の夢の名残りのように、ひとならびのバラックの屋根が、ぼんやりかすんで見えた。