轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
六
男は、今度は、電燈を消すからと云い、ストーブへ薪を入れ足し、
「どうだね、ちつとあつちで眠らんかね。こゝじや、きゆうくつだろう」
「いゝえ、ちつとも……」
と、油断をみせず、彼女は言つた。
電燈が消える。一瞬、真暗になり、男の姿を見失うほどであつたが、やがて、すべてがもとへもどつた。男のいびきが聞えはじめた。
こうして、この不思議な一夜が過ぎ、康子は、やつとの思いで夫の宿舎へたどりついたのである。
それは幾むねにも分れているぼう大な建物の一つで、受附の少年はすべてを心得ているらしく、こちらへと言つて、長い廊下の一ぐうにある部屋の前へ彼女を連れて行つた。
さすがに、彼女の胸はおどつた。少年のノックに、「オーイ」とこたえる夫の声が聞える。
六
康子の夫、井出一徳は、正規の道を踏んだ陸軍技術将校で、砲兵科の秀才として部内では早くから嘱望され、専門の弾道学は世界的とまで言われていたが、彼は研究室に閉ぢこもつてばかりいなかつた。自分から志顧して直接兵器製作の現場に乗り出し、更にまた実戦に於ける新兵器の性能をたしかめるため、わざ/\第一戦部隊の指揮官を買つて出るというふうであつた。