轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
そして、夫の方は見ずに、
「もう、なにをおつしやつても驚きませんわ。でも、こゝじや、いや……。もつと広々した、明るい日の射すようなところで、なにもかもおつしやつて!」
窓ガラスに顔をおしつけるようにして、彼女は、自分の声がうつろに響くことをおそれながら言つた。
「ふむ、そうか。そんな場所があるかい、いつたい?」
「えゝ、ありますわ、どこにでも……。外へおでになれません? このへん、どこを歩いても原つぱみたいですのに……」
「原つぱか、よかろう」
二人はそれ/″\支度をした。一徳は長かをはき、康子はコートを羽織つた。
建物の裏手からすぐ通用門を出ると、板べいで囲われた倉庫風の建物がいくむねも立ちならぶ間をぬけて、やゝ広い草地に出る。そこにもさま/″\な形をした鉄材が山のように積まれており、なかには明らかに砲身と思われるものが赤さびたまゝ不気味に横たえられてあつた。
康子は夫のうしろを小走りについて歩いたが、やがて草地のつきるあたりから、小道がまばらな雑木林に通じ、二人はいつの間にか肩を並べて歩いている。
「こういう道を歩くのも久しぶりですわ」
と、彼女は、ふと、そんなことを言う。