轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
三
たゞおなじことは、退くよりも進むことをえらんだというだけである。
彼はしばらくいなかにとゞまつて「何をなすべきか」をゆつくり考えることにした。おぼろげにではあるが、彼にも日本の向うべき方向はわかつていた。そして、その歩みをさまたげるものが何であるかということもほゞ察せられた。彼はまずなによりも自分を新しい人間に鍛えなおす必要を感じた。彼はどんな場合にも「自然」であろうとつとめた。「自然」であるためにどんなに勇気がいるかを彼はつく/″\思い知つた。
そういえばまつたく日本の社会は「不自然」で埋められているといつてよかつた。そのことを彼は五年間の異民族との接触ではじめて知つたのである。
三
市ノ瀬牧人は劇場で行列を作つている群集のなかに知つている顔をみつけだす興味から、つぎつぎに眼をうつしていくうちに、同村の一青年が彼の視線をまぶしそうに避けながら、連れの少女をそれとあからさまにさとらせまいとしてうろ/\し、連れの少女はまたなにが恥かしいのかいきなりたもとで顔をかくしてしまうのをみて、そこにもひとつの小さな「不自然」をみつけだした。
彼はしかしそれ以上この青年にものを言う気にもならず、ふと劇場の二階の窓に眼をうつした。