轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
五
そう言つて、彼女は、そこへ突つ伏した。
「強情だなあ、お前は……。どうして、うそでもいゝから、おれといつしよに死ぬ、と言つてくれないんだ? 気安めに、あとを追うとでも言つたらいゝじやないか。とにかく、それが夫婦の情というもんだ」
すこし折れて来たふうがみえるので、彼女は、そのまゝ、顔をあげずに云つた。
「その夫婦の情について、あたくしを疑つてらつしやるんですの?」
五
一徳は寝間着のはだに寒さがしみるとみえ、両腕をかわる/″\こすりながら、
「そうとばかりも言えんが、疑いたくなることもある。いつたい、お前は女らしくない」
女らしくない、という夫の批評は、これがはじめてではなかつた。しかし、夫がそれを言いだす時は、きまつてなにか意見の合わない時であつた。妻としてそういう印象を与えることは自分でもまずいと気がついていたから、彼女は、どうでもいゝことはずいぶん彼の言うなりになつていたつもりである。ところが、その言うなりになり方が、どうもまだ夫の気に入らぬらしい。
そういうことのあつた翌日、夫の一徳は、昼すぎに、いつものように服を着かえ、出かけるのかと思うとそうでもなく、なにやら書類のようなものを折カバンから出して、ひとつ/\ていねいにそろえたり、不用のものは破いたりしていた。