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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

「キング」大日本雄辯會講談社、1931(昭和6)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 页

青空文庫

お半を殺害したのも羅門のしわざ、江の島の巫女殺しも羅門のしたこと。――また溯って、女笛師の雪女を殺したのも羅門塔十郎以外の何者でもない!」

「だまれッ、江漢」

鋭く、ふるえを帯びて叫ぶのを、老先生は子供の頭を抑えるように、静かに、沈痛に、

「余人の眼はくらませても、この江漢の眼は晦まされん。――なぜ殺したか、その証拠は歴々と数えることができる。しかし、わしは吟味役ではない、ただ重要なところだけを抉っておけば足りる」

「えいッ、老耄め。汝の子の罪悪を、口賢くも、この羅門に塗りつけようとするか」

「羅門よ。それはおまえのことだ」

「証拠があるか」

「ある!」

「なにッ、聞こう!」

「おう、言わずにおこうか。抑、其方が大それた悪事を目企みはじめたのは、いうまでもなく、龍山公のお血統の詮議を依頼されてからのこと。次に、その血統の四人を、すべてこの世から亡い者にして、玉枝一人を代え玉につかい、亀山六万石を乗っ取ろうとしたのは、国家老大村郷左衛門のふところに抱き込まれてからのことじゃ」

「見たような嘘をいう奴だ。なんでそれが証拠になる。世囈言も、ほどにいたせ」

「だまれ、静かに聴け」