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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

むしろ反対なものがあった。恍惚とした法悦感が、閉ざされた眼にも、ポッとあけた口にも、鮮かに漂っていたことであった。

髻がちぎれて髪が乱れて、額や頬へかかっていたが、それさえも苦痛のあらわれと見えずに、艶かしさを見せていた。法悦感の真っ只中において、息が絶えたものと見るべきであった。

杉の木蔭にかくれながら、覆面の武士の行動を、眺めやっている紋也の心には、そういう若者の異様な死相が、疑惑となって渦巻いていた。

その間も覆面の武士たちは、家のほうへ向かって小走って来たが、若者の死骸の前まで行くと、その死骸を包むようにして、足をとどめて前こごみになった。と、二人ひざまずいたが、やおら重々しく立ち上がった。見れば若者の死骸の足と、死骸の頭とを抱えている。どこかへ運んででも行くようである。まさしく運んで行くのであった。死骸を抱えた二人の武士が、早い足どりで歩くのを包んで、三、四人の覆面の武士たちが、また群像のようにかたまって、空地を横切って月光を縫って、元来たほうへ引っ返したのだから。

武士たちの姿が見えなくなった時に、紋也は杉の木蔭から出た。「行動がいかにも規則正しい、まるで予定の行動のようだ。