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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
奉書取り
「すっかり見もし聞きもしたよ。組頭へさっそく言上しよう」
――で、お粂と金兵衛との二人が、立ち去ったほうを見送ったが、以上を物語の発端として、次回から序曲にはいることにしよう。
奉書取り
三回ばかり足を早めて書こう。
ここは京都の烏丸通りの、徳大寺別邸の裏庭である。植え込みがしげく繁っていて、一宇の亭が立っている。時刻は夜で星がある。
亭で話している二人がある。一人は主人の徳大寺卿で、一人は公卿武士の清左衛門であった。
「これこそ大切の巻き奉書だ、留書き奉書といってもよい。大先生へお渡しするよう」
「かしこまりましてござります」
「で、すぐにも出立するよう」
「かしこまりましてござります」で、清左衛門は植え込みをくぐって、どことも知れず立ち去ってしまった。
と、その時一所で、物のうごめく気配がしたが、夜鳥か? それとも風の音であろうか? いやいや人間がいたのである。
番士の矢柄源兵衛であった。
「青公卿どもが懲りようとはせずに、またも陰謀を企てているそうな。ご城代様にはお心にかけられ、この俺を隠密に仕立て上げて、ここの邸へ入り込ませたが、大変な話を聞いてしまった。