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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

兵馬ののしる

「しかしあらかじめ申し上げておく、今日は切り合いをやめといたしても他日にはきっと討って取るとな」

「よかろう」と紋也もビクツカなかった。「すでにいつぞや大川の上で互いに戦いは宣したはずで。……再度の宣言くどうござるよ。……が、それにしても兵馬氏とやら俤がご尊父とそっくりでござるな」

すると兵馬は一歩進んだ。

兵馬ののしる

一歩進んだ桃ノ井兵馬は、激怒に燃えるするどい瞳を、紋也の顔へ注いだが、どうしたのかにわかに笑い出した。

「貴殿の生活向きはいかがでござる」

「え?」とこれには紋也のほうが、度胆を抜かれた格好となったが、「ご親切は感謝、心配はござらぬ、裕福にくらしておりますよ」

「アッハッハッ、そうでもあるまい」兵馬はまたもや笑ったが、「道場の主の浪人ぐらし、仕官の拙者とは相違がござろう」

「いらぬ斟酌、ご無用ご無用」

「拙者の主人をご存知かな?」――なぜこんなことをいい出したのであろう? 兵馬はこういって紋也を見た。

「知りもいたさねば知ろうとも思わぬ」紋也の冷淡な声というものは!

が、兵馬は後をつづけた。「お明かしいたそう、拙者の主人を。権臣北条美作殿よ」

「ほほう」