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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
襟が開けて胸もとがのぞいて、青白い皮膚の肋骨の窪みに、膏汗がにじみ出て光っている。
圧せられて後へ引くのではなかった。策があって後へ引くのではあったが、しかし紋也には兵馬の殺気が、腥いまでに感じられた。
「人の心身へ喰い込んで、生血を吸って相手を殺して、自分自身を生かすという、吸血鬼のような凄い奴だ! 心からの怨みと執念とを、俺に注いでいるらしい。それに剣技も素晴らしい! いってみれば復讐鬼だ! うむ、うむ、うむ、手強い敵だ! おッ、来るな!」
と山県紋也は、少し乱れた鬢のほつれ毛を、これも汗ばんだ額へかけて、ともすれば忙しくなろうとする、呼吸を調え調えながら、刻み足をして下がったが、忽然サーッと左転した。と、あたかもつんのめるように、兵馬がその間へ飛び込んで来た。横へ一揮だ! 片手切りだ! が、その時には紋也の体は、小門のほうへ飛んでいた。すなわち位置が変ったのである。が、それとても一瞬間で、またもや兵馬は爪立つ気勢に、身長高々とのすようにしたが、紋也の真っ向へ太刀を下ろした。が、その太刀もひっぱずされて、いささか体形の崩れたのを、グッと引き止めて立ち直って、兵馬は太刀を振りかむったが、これはどうしたというのであろう。