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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
葛の葉のうらみ貌なる細雨かな
バラバラと細雨が降ったかと思うと、すぐにあがって陽がこぼれるのも、この季節での出来事である。とまれ寂しい季節といえようが、一面には潔い。
投げられて坊主なりけり辻相撲
勇ましい男らしい辻相撲などがあそこにもここにも行なわれるからである。
町道場の道場の中で、打ち合う竹刀の冴えざえとした音が、往来の人の注意を引いて、足をとどめるもこのごろであって、これとても潔いということができよう。
そういう潔い竹刀の音が、神田雉子町の一所から、朝に夕に聞こえて来た。山県紋也の道場である。
さてある日のことであったが、面籠手を着けた山県紋也が、弟子に稽古をつけていた。黒の紋付きに黒の袴、朱色の胴をゆるやかにつけ、一刀流の流儀に準じて造られた鉢白の面をかむり、これも同じように流儀に準じた二段染めの籠手をはめた手で、握り太にして三尺五寸鞣し革で包んだ竹刀を引っ下げ、おりから武者窓から棒縞をなして、幾筋か場内へ流れ込んで来た午後の日の光に半身を染めて、悠々然として突っ立った態度は、まことに凛々しいものであった。
と、羽目板を背後にして、タラタラと並んでいる弟子たちのほうへ、面越しに視線を送ったが、