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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
目明しの輩下
「大事はござらぬ、捨てておおきなされ。……こやつは敵方の間者でござる」紋也が静かにいったのである。
目明しの輩下
取り巻いている門弟たちを分けて、山県紋也は気絶している友吉という男の、倒れている姿を見下ろしたが、
「方々」と門弟たちへ声をかけた。
「こやつを何者と思いますかな?」――で順々に門弟たちを見た。
下げている竹刀を顫わせたり、着けている胴の面を撫でたり、袴の襞をこすったりして、門弟たちはたたずんでいたが、答えようとはしなかった。というのは師匠の紋也の言葉を、意味取ることができなかったからで、それにはもっともの理由があった。友吉という男が一月ほど前から師匠の山県紋也の邸へ、内弟子として住み込んで、家事には忠実に働くし、剣道の稽古には精を出すしするので、内でも外でも評判がよかった。ただし決して武士ではないし、といって真面目の町人でもなくて、素性という点では疑わしくはあったが、町道場の習慣として素性の知れないそういったような男が弟子入りをするというようなことはあながちめずらしいことでもなかった。で、問題にしなかった。「友吉という男はよくできている」