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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
「…………」
「お兄様とそうして妾とへは、色濃く伝わっているけれど」
「…………」
「でも妾はお前さんにいうよ。せめて剣道でもお稽古なさいってね、よそほかの道場へ通って行って、お稽古をしていただくのではなし、内の道場でお兄様から、お稽古をしていただけばよいのだからね。……以前はそうでもなかったけれど、この頃ではお前さんは道場へも出ず、竹刀を取り上げようともしないではないかえ。どうもそれではよくないねえ。だんだん体だって弱くなりましょうよ。……」
「…………」
「でも妾はお前さんが好きだよ。妾と性質が似ていないので、それでかえって好きなのかも知れない。……お兄様はあの通りに磊落で、快活で剽軽で大胆だから、やはり好きには相違ないけれども、でも妾にはお兄様は、兄弟などというよりも、同志といったほうがふさわしいのだよ。……そこへ行くとお前さんは反対だよ。兄弟らしい気がするよ。行き届いた細かい愛情で、お兄様や妾の身の上などを、いろいろに案じてくれるのだからねえ。可愛い可愛い弟と、妾には心から思われるのだよ。……だからもしお前さんの身の上などにもしものことがあろうものなら、妾にはどんなに悲しいだろう」