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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
そうしてそういう草の空地には、おでん燗酒の屋台店だの、天幕張りや菰張りの食物店などが群れをなして建っていたり、ポツポツと離れて建っていたりした。官許を得ての盛り場ではないので、燈火などは乏しく灯ってようやく人の顔の見える程度の、明るさを保っているばかりであった。
でもし誰かが高い所へ上がって、夜この一画を見下ろしたならば、異形なものに見えたことであろう。大地にへばり付いている小さい家々は、――ある一所には数をなしてかたまり、ある一所にはバラバラに立って無秩序をなしている小さい家は、――襤褸でもかたまっているように見え、その家々の集合によって、無数に織られている露路という露路を、ウネウネと歩いている嫖客たちの列は、虫けらのように見えることであろう。ところどころからあるかなしかの、薄明るい光が茫と立って、それが四辺を明るめているようすは、全然光のないよりも、かえって気味悪く見えるかもしれない。一ツ目橋のほうへやや近く、家のない空地がひらけていたが、そこに比較的に明るい燈火が、四方菰張りの小屋の隙を通して、幾筋となく漏れ出て見えたが、それは賭博小屋の火の光であった。