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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

肉魔のまどわし

何かに仰天したようすである。

三度目に美作が小次郎へ追いつき、ぶっ放さんとした時、松永町のほうと通じている、小広い横丁から一団の者が、忽然として現われて来て、小次郎を保護でもするかのように、小次郎を人数の真ん中へ包んで、美作をさえぎってしまったからである。

肉魔のまどわし

小次郎を中へ包むようにして、美作をさえぎって往来の中央へ、たむろするようにたたずんでいる、十人の一団は武士が四人に駕籠舁きが二人に女が四人という、まことに変わった一団であって、武士はいずれも年が若く、健かで美貌であるらしく、頭巾で顔をこそ包んでいるがお小姓じみたところがあった。緑色の小袖を一様に着て、羽織なしに袴をはいていた。四人の女はこれに反して、いずれも醜い老女らしく、これも緑色の衣裳を纒い、緑色の被衣をかぶっていた。

と、二人の駕籠舁きによって、舁がれている女駕籠が一挺あったが、塗りは総体に黒色で金銀の蒔絵がほどこしてあって、扉のあたりに深紅の総が、焔の束のように下がっていた。その駕籠の扉に引き添って、地に膝を突いて、小次郎が烈しくあえぎながら、それでも刀は手から放さず、握ったままで静まっていた。