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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

二品を!

「ああお前様の可愛いご良人に?」

「でも近来は寄り付きませぬ」

「なるほど、お家へ寄り付かないので」

「お爺様お探ししてくださいまし」

「どうもな、それは、ちとむずかしい」

「探してお渡ししてくださいまし」

「どうもな、それは、ちとむずかしい。俺は竹之助様を存じませんのでな」

「竹之助様は美男でございます」

「まことに有難う存じます」

「でも片眼なのでございます」

「片眼? はてな? それで美男で?」

「今年の夏頃に潰されました」

「それじゃ兵馬という武士に似ている――桃ノ井兵馬とはおっしゃいませぬかな?」

二品を!

しかし女の声は否定した。

「いいえいいえ妾の良人は、南条竹之助様といいまして、そのような桃ノ井兵馬などという、いやらしい名前ではございません」

「さようかな、それはそれは」老人の声はいぶかしそうであった。「が、片眼をつぶされたといえば」

「いいえいいえそれに妾の良人は、禁裡様方のお味方で、忠義なお方なのでございます」

「ははさようで、では人違いだ。兵馬と申すお武士は、幕府の犬でございますからな」

「それを好んでお父様が、夫婦にしたのでございます」

「よいお心掛けでございますよ。