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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
まばたきをしない両眼なのである。
その嘉門と二間の距離をおいて、右手に抜き身をひっさげて、左手を握ったり解いたりして、心の驚きをあからさまに示して、突っ立っている男があったが、頭が人並みより大きくて、体が人並みより小さくて、片輪者らしいところがあった。いうまでもなく金兵衛なのであった。薄くて細くて短い眉毛、細くて小さくてショボショボした眼付き、獅子鼻ではないが似たような鼻、唇の薄い歯の反った大きな口、――で、顔は醜いのであったが、幸い月が背後にあって、光にそむいているがために、嘉門の眼には見えなかった。が、もし月が前にあって、顔を照らしておったならば、そういう金兵衛の醜い顔が、困惑と絶望と驚愕とで、ゆがんで行くのを見たことであろう。
しばらくの間二人は黙っていた。
「お爺さん!」とゴックリと唾を飲みながら、とうとう金兵衛はいい出した。「ごもっとも様でございます。私が悪うございました。どんなに欲しい品物だろうと、お前さんという持ち主があって、その持ち主が眠っていなさる隙に、取ろうとしたのは悪うございました。あやまります、あやまります。で、堪忍しておくんなさい」