轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

腰をかがめるなり手を下げるなり、ひざまずくなりすべきものだ! それをなんぞや血に濡れた抜き身を、臆面もなく差しつけおる! 抜き身を捨てろ! これを捨てろ!」――いいいい嘉門は背後のほうへ、一歩一歩小刻みに下がった。と、嘉門の正面に、小長い物が差し出されて、それが月光に白々と浮いて、差し付けられている抜き身の切っ先を、迎えるように上下へ動いた。武道には全く門外漢の、お狂言師の嘉門ではあったが、こういう場合にはおのずからに、こういう姿勢を取るものと見えて、綴じ紙と一緒に右の手に、握り持っていた巻き奉書を、剣道でのいわば平青眼の形に、グッと前のほうへ差し出して、金兵衛が差しつけている血に濡れた抜き身に、ヒタとばかりに向かい合わせたのであった。

「抜き身?」と金兵衛は不思議そうにいったが、「あッ、いかさま、これはこれは、抜き身を差しつけておりましたなあ」こういうとはじめて気付いたように、――事実はじめて気がついたのでもあるが――ヒョイと抜き身を左の脇腹の、袖の下へ隠すように押し隠した。「これでよろしゅうございますかな?」――で、グッと眼を据えて、眼の前の空間に浮かんでいる、巻き奉書を凝視した。