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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
しかし金兵衛のそういう姿勢は剣道でいうところの脇構えであって、構えの中でも特に陰険な、殺気に充ちたものとして、相手を恐れさせる構えであった。武道に門外漢の嘉門には、もちろん金兵衛のそういう姿勢が、脇構えであるかなんの構えであるかは、知るところではなかったけれども、姿勢そのものの持っている、殺気ばかりは感ぜられた。で、嘉門は同じように、ジリジリと小刻みに下がったが、「抜き身を捨てろと申しているのだ! なぜ捨てぬか、なぜ持っている! 袖の下へこっそりと隠しておいて、機を見て払い上げて俺の胴を、斜に切ろうとしているのだな! 抜き身を捨てろ! これ捨てろ!」
すると金兵衛は、「へい」といったが、二品はぜひとも手に入れなければならない。そのためにはどのようないい分でも聞こう。――という心持ちが動いたものと見えてガタガタと地上へひざまずくと、抜き身を膝の前へ真っすぐに置き、両手を柄頭の後方へ置いた。「これでよろしゅうございましょうな。……二品をお渡しくださりませ」
しかしそういう金兵衛の姿勢は剣道でいうところの「伏叉の構え」に、おのずからはまっているのであって「脇構え」