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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

「わしにしてからが討ってあげたい」

「京丸へお呼び寄せなさいましてから、園子様のお心を伺って、敵の素性を突き止めて、兄上がお助太刀なさいまして、敵討ちをおさせなさりませ」

「そうさ、わしもそう思っている」

兄妹が歩みを運びながら、話し合っている話といえば、おおよそこのようなものであった。

京丸での仕事のだいたいの形が、この初夏までにでき上がったので、紋也にとっては許婚の青地園子を京丸へ呼び寄せ、安全に保護を加えようと、二人が迎えに行くところなのであった。

「お粂様、お可哀そうでございますな」

悪戯ッ子らしいからかい声で、ややあって鈴江が紋也へいった。

「なぜな?」と紋也は訊き返した。

「元気よく江戸へ旅立たれたではないか」

「お許婚の園子様を、京丸へお迎え取りなされようと、兄上がおいいだしなされた日に、不意にお粂様にはさびしそうになされて『私は江戸表へ参ります。そうして江戸の同志の方々と、江戸で仕事をいたします』と、このようにいわれて金兵衛殿と、京丸を出られたではございませぬか」

「江戸で働くのも大いによろしい」

「それにしてもにわかにあのように。……」

「まあまあそれはいわないほうがよかろう」