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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

敵討ちはどうなるか?

「虐待しおる。アッハハハハッ。ただし珍しいことでもない。源兵衛殿、気永く待つことにしましょう」――二人の浪人が話しあっていた。

敵討ちはどうなるか?

さっき方番頭と押し問答をしてむしろ脅かして千代古屋の奥へ、通って行った浪人は、桃ノ井兵馬と矢柄源兵衛とであった。

暗い行燈の光を前に、二人は腹立たしそうに話していた。

「こう虐待をされるような、こんな身分におちぶれるほどなら、何も人一人たたっ切って、巻き奉書など奪わなければよかった」

「青地清左衛門を叩っ切ったことかな」

「うん」と源兵衛は不気味そうにいった。箱根の山中で背後から、声をかけずに叩っ切ったが、今ではいやな気持ちがしている。

「ナーニ人間の一人や二人、叩っ切ったところでなんでもありゃアしない。……それはそれとして飯が遅いな。……おや、廊下で足音がした。下女めが夕飯を持って来たのかな」

で、二人は耳をすました。しかし廊下での足音は、部屋の前から立ち去ってしまった。

「なんだなんだ面白くもない」

しかしもし二人の浪人者が、廊下に足音を立てた主の、素性を知ることができたならば「面白くもない」というような、そのような比較的のん気な気持ちで、話し合っていることはできなかったであろう。